政府・自民党は7日、これまで死守すると明言してきた米、小麦などのいわゆる「聖域」とよばれる五品目をめぐるTPP交渉で、飼料、加工品など国内農業の影響が少ない品目の関税を撤廃、削減する方針を固めた。
これにより農業を取り巻く求人は今まで以上に厳しさを増したと言っていいだろう。これまでも耕作放棄地や農業の後継者不足に悩む農業従事者にとっても、さらにこれから農業を志す人にとっても先行きが不透明な農業はかつての「地味ではあるが、金になる」という常識をひっくり返るものと言っていい。
さらに打撃を受けかねないのは農業だけにとどまらない。今回の農業五品目は586品目に分けられており、これをタリフラインと呼ぶが、この品目の中には米、麦は当然として牛肉や豚肉、乳製品、甘味資源作物など、畜産業や酪農家などにも無関係な話ではないのである。
また、医療格差の問題も考えなくてはならない。アメリカがかんぽ生命について国の直轄の事業について苦言を呈しているのは読者の方々も聞いたことがあるのであろう。医療保険の自由化や国民皆保険制度が脅かされているのは、実は求人にも関係があるのである。
これらを加味すると、関税を撤廃し、これらの輸出よりも輸入が増えれば、外食産業は安い材料で作れるということでメニューの値下げが発生する。そして安い外国の農作物が日本に流入することにより、農家は間接的なダメージを負う。
TPPは日本の社会構造のうち屋台骨の二つをへし折り、そこに鉄骨が入るのか廃材が入るのか分からないというリスクが有る。果たして自民党政府は光に当たる人間の影に生きる弱者に目を向けることはできるのであろうか。